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「心拍ゾーン別トレーニングの効果とは?Zone 2を中心に知っておきたい持久力向上の秘密」
トレーニング効率を上げる
ただ頑張るだけのトレーニングから一歩進んで、「どの心拍ゾーンで何を鍛えるか」を意識すると効果が格段に変わります。特にZone 2(有酸素基盤作り)やそのバランスとの組み合わせは、持久力やVO₂max、パフォーマンス改善に非常に効果的です。では実際にどんな効果が報告されているのでしょうか?
研究の概要と引用文献
1. トライアスロン: Zone 2時間割合が20%以上で換気閾値(VO₂θ)が大幅に改善された例
大学生トライアスロン選手を対象に、Zone 2(第一換気閾値領域)でのトレーニング時間が総トレーニング時間の20%以上であった群では、VO₂θ(換気閾値)が有意に向上したという報告があります。VO₂max自体は変わらなかったものの、持久パフォーマンスの基盤となる閾値が改善された点が注目です。
2. 持久系エリートでは「80%を低強度(Zone 1)、20%を高強度(Zone 3)」のトレーニングが最適とする分布論
エリート持久系アスリートのトレーニング分布を分析した結果、多くは**80%を低強度、20%を高強度(Threshold含む)**でトレーニングしており、この「ポラライズ(偏極型)」がパフォーマンス最大化に効果的であると報告されています。なお、Zone 2(閾値周辺)のトレーニングは少ない割合で行うのが特徴です。
考察(意義と応用)
- 閾値の改善こそが持久力向上の鍵:VO₂maxだけを追わず、「長時間走り続けられる力(VO₂θ)」の向上こそが競技持久力の本質。
- 極端なHIIT積極型よりも構築型:高強度だけに偏らず、低強度を積み上げることで疲労の蓄積を防ぎながら、身体に強い適応が期待できる。
- 実践への置き換え:アマチュアでも「週3〜5回のうち、1〜2回はZone 2での60分以上走など」を導入することで効果を実感しやすい。
実生活へのヒント
- 中〜長距離ランナーや市民ランナーへ → 週に最低1回はZone 2ペース(会話ができるブレーンストームペース)で60分以上のランを組み込む。
- 初心者や運動習慣がない方へ → 毎回20〜30分のZone 2ウォーキングやゆるジョグを習慣化することで、VO₂θの改善は徐々に期待可能。
- 上級者やアスリートへ → ポラライズ型を意識してトレーニング。例:週3回低強度ジョグ(Zone 1/2)、週2回閾値付近トレーニング(Zone 3〜4)構成。
まとめ
ゾーントレーニングはただ強度を変えるだけのものではなく、「どの部分を鍛えるか」を明確にする科学的アプローチです。とりわけZone 2の役割は、疲れにくく、長時間能力を最大限発揮する体づくりに欠かせません。強度をコントロールしながら、効率よく着実な成果を積み重ねていきましょう。
- Stöggl, T., & Sperlich, B. (2015). Polarized training has greater impact on key endurance variables than threshold, high intensity, or high volume training. Frontiers in Physiology, 6, 295.
- Trevizani, G. A., Alves, R. C., Gobbi, R. B., Nakamura, F. Y., & de Mello, M. T. (2018). Effects of different zone-based training distributions on endurance performance in triathletes. Journal of Human Kinetics, 65, 27–37.