若者における運動と睡眠が認知機能に与える影響 - パフォーマンス向上の医学メディア

若者における運動と睡眠が認知機能に与える影響

「運動すれば頭が冴える」「寝不足だと集中できない」。この直感を科学的に検証した研究があります。日本の研究チーム(Katoら, Journal of Sport and Health Science, 2018)は、健康な若者における運動習慣と睡眠時間が、記憶や注意力などの認知機能にどのような影響を与えるかを調べました。


研究の背景

  • 運動や睡眠が認知機能に良い影響を与えることは知られています。
  • しかし、それぞれがどのような認知機能に特に関連するのか、また脳の働きにどう反映されるのかは明らかではありませんでした。

方法

  • 対象:健康な若者23名(平均22歳)
  • 運動量の測定:加速度計を用い、日常の歩数と消費カロリーを記録
  • 睡眠の測定:アクチグラフで5〜7日間の総睡眠時間と睡眠効率を測定
  • 認知機能テスト
    • N-back課題(作業記憶)
    • ウィスコンシンカード分類テスト(WCST)(実行機能)
    • 持続的注意テスト(CPT-IP)(注意力)
  • 脳活動の測定:近赤外分光法(NIRS)で前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度を測定

主な結果

  1. 運動量と作業記憶(N-back課題)
    • 運動量が多いほど、0-back・1-back課題で反応時間が短縮(処理スピード向上)
    • 一方で正答率には有意な差なし
  2. 睡眠時間と作業記憶
    • 総睡眠時間が長いほど、2-back課題の正答率が高かった(複雑な作業記憶の改善)
  3. 実行機能(WCST)・持続的注意(CPT-IP)
    • 運動量・睡眠時間との有意な関連は見られなかった
  4. 脳活動(NIRS)
    • 運動量が多いほど、前頭前野の酸素化ヘモグロビン(OxyHb)の増加が大きかった
    • 睡眠時間は特定のチャンネルでのみOxyHbと関連

考察

  • 運動は脳の処理スピードを高める → 特に簡単な課題で反応時間が短縮し、前頭前野の活動も増加
  • 十分な睡眠は複雑な記憶課題の精度を向上 → 睡眠不足では情報保持・更新が難しくなる
  • 運動と睡眠は、それぞれ異なる形で脳機能を支えている

実生活へのメッセージ

  • 若者であっても「運動不足」と「睡眠不足」は頭の働きを鈍らせる
  • 毎日適度な運動を取り入れることは、思考スピードを上げるカギ
  • 6〜8時間の睡眠を確保することで、複雑な記憶や学習に強い脳を保てる
  • 勉強や仕事で集中力を保つためには、「よく動き、よく眠る」が基本

引用文献

Kato K, Iwamoto K, Kawano N, Noda Y, Ozaki N, Noda A.

Differential effects of physical activity and sleep duration on cognitive function in young adults.

Journal of Sport and Health Science. 2018;7(3):227–236.

doi:10.1016/j.jshs.2017.01.005

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