VT・LT・ATとは?トレーニングで重要な「閾値」の基礎知識 - パフォーマンス向上の医学メディア

VT・LT・ATとは?トレーニングで重要な「閾値」の基礎知識

1. 閾値とは?

運動強度が上がるにつれて、呼吸の仕方や代謝の仕組みに変化が現れます。これらの変化点を「閾値(threshold)」と呼びます。閾値はトレーニングの質や持久力パフォーマンスに大きな影響を与えるため、持久系スポーツでは特に重視されます。


2. VT(換気閾値, Ventilatory Threshold)

  • 定義:運動強度の上昇に伴い、呼吸の換気量が急激に増加し始めるポイント。
  • 生理学的背景:体内で乳酸が増え始めると、これを中和するために二酸化炭素(CO₂)が増加し、呼吸が速く・深くなる。
  • 意味:VTを超えると「話しながら走るのが難しい」感覚になり、持久的に維持しにくくなる。

3. LT(乳酸閾値, Lactate Threshold)

  • 定義:血中乳酸濃度が安静時より明らかに上昇し始める運動強度。
  • 生理学的背景:低強度では乳酸はエネルギー源として再利用されるが、強度が高まると処理能力を超えて乳酸が蓄積。
  • 意味:LTは「疲労し始める境界線」とされ、持久力パフォーマンスの大きな指標。

4. AT(無酸素性作業閾値, Anaerobic Threshold)

  • 定義:有酸素代謝だけではエネルギー供給が追いつかず、無酸素代謝が優位になり始める運動強度。
  • 生理学的背景:乳酸の急激な蓄積が見られ、運動持続時間が制限される。
  • 意味:ATは「持久的に耐えられる最大強度」を示すと考えられ、トレーニング目標設定に用いられる。

5. これらの違いと使い分け

  • VT:呼吸の変化を指標にする(現場やフィールドで簡便に測定可能)
  • LT:血液検査による客観的測定(研究やトップアスリートで重視)
  • AT:理論的にはLTとほぼ重なるが、定義や計算方法に違いあり

6. トレーニングでの応用

  • VTを利用:会話がギリギリ成立する強度 → 「会話ペース走」などに活用
  • LTを利用:乳酸測定で正確に強度を設定 → アスリートのトレーニング計画に必須
  • ATを利用:最大持久力を伸ばすための「限界近くのインターバル」設定に活用

7. まとめ

VT・LT・ATはいずれも「どこまで強度を上げられるか」を示す重要な指標です。ゾーントレーニングの理解を深める上で、これらの閾値を把握しておくと、効率的かつ科学的なトレーニングが可能になります。

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