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筋トレ後のリカバリー栄養 ― タンパク質摂取で筋力を守り、回復を早める科学的戦略
筋トレ後の身体はどうなる?
ハードなレジスタンストレーニング後、筋肉は微細な損傷を受け、筋タンパク質分解(MPB)が優位になります。このままでは筋力の低下や筋肉痛が長引き、次のトレーニングの質が落ちてしまいます。
そこで重要なのが、筋タンパク質合成(MPS)を高め、修復と回復を加速させる栄養戦略です。
タンパク質摂取は本当にリカバリーを早めるのか?
システマティックレビューとメタ分析からのエビデンス(Pearson 2023)
- タンパク質補給は、最大筋力(MVC)の回復を促進
- 血中クレアチンキナーゼ(CK)の上昇を有意に抑制 → 筋損傷の指標が軽減
- 一方で、筋肉痛(DOMS)を軽減する効果は限定的
→ 結論:タンパク質は「痛み」には直接効かないが、筋力維持と筋修復の加速には効果的。
【Pearson AG, et al. 2023】
どのくらい・いつ摂ればよいのか?
運動後1〜72時間の戦略(van Vliet 2018)
- 運動直後〜2時間以内:高品質タンパク質20–40g(例:ホエイプロテイン)がMPSを最大化
- その後の5〜12時間:3〜4時間おきに20–30gずつ → 持続的にMPSを刺激
- 夜間リカバリー:就寝前にカゼインなど吸収の遅いタンパク質を20–30g → 夜間のMPS維持
→ 「運動直後の一回」だけでなく、24時間を通じた分割摂取が効果的。
【van Vliet S, et al. 2018】
実生活でのリカバリープラン
トレーニング直後(0〜2時間以内)
- ホエイプロテインシェイク(25g)
- チョコレートミルク(炭水化物+タンパク質)
その後の食事(3〜4時間おき)
- ご飯+鶏胸肉(30gタンパク質)
- パスタ+ツナ or 卵
就寝前
- 牛乳200ml または カゼインプロテイン(20–30g)
まとめ
- タンパク質補給は筋力回復とCK抑制に有効(Pearson 2023)
- 運動直後〜72時間の継続的な摂取がMPSを最大化し、筋修復を加速(van Vliet 2018)
- DOMSは完全に防げないが、翌日のパフォーマンス維持には必須の戦略
→ 筋トレ後のリカバリーを最適化するには、**「直後+分割+就寝前」**の3段階でタンパク質を摂取することが鍵です。
引用文献
- Pearson AG, Hind K, Macnaughton LS. The impact of dietary protein supplementation on recovery from resistance exercise-induced muscle damage: A systematic review with meta-analysis. Eur J Clin Nutr. 2023;77(4):533-544.
- van Vliet S, Burd NA, van Loon LJC. Achieving Optimal Post-Exercise Muscle Protein Remodeling: Nutritional Considerations to Support Skeletal Muscle Adaptation. Front Nutr. 2018;5:40.