サッカーの走り負けを防ぐカギは呼吸筋?反復スプリント能力を高める最新知見 - パフォーマンス向上の医学メディア

サッカーの走り負けを防ぐカギは呼吸筋?反復スプリント能力を高める最新知見


反復スプリントで差がつく、呼吸筋トレーニングの効果とは

サッカーの試合でよくある光景。前半は動けていても、後半に入ると足が止まり、スプリントの切れが落ちる…。多くの選手が「スタミナ不足」と考えますが、実はその一因が 呼吸筋の疲労 です。

呼吸筋が疲れてしまうと、脚の筋肉への血流が奪われる「呼吸筋メタボリフレックス」が起こり、反復スプリントや1対1の競り合いで踏ん張れなくなります。近年の研究では、呼吸筋を鍛えることでサッカー選手の反復スプリント能力や運動耐容能が改善する ことが示されています。


研究の概要|女子プロサッカー選手を対象としたRCT

  • 研究チームと発表年 ブラジル・サンカルロス連邦大学の研究, 2018年
  • 対象者 女子プロサッカー選手18名
  • 方法
    • 無作為に「呼吸筋トレーニング群」と「シャム対照群」に割り付け
    • デバイスを用いて1日2回, 30呼吸を6週間継続
    • 呼吸筋力, 最大運動耐容能, フィールドでの反復スプリント能力を前後比較
    • 近赤外分光法で呼吸筋と大腿四頭筋の酸素動態も評価
  • 期間 6週間のランダム化シャム対照試験

主な結果|反復スプリント能力と筋酸素動態の改善

  • 呼吸筋トレーニング群のみで外側広筋の酸素化が有意に改善
  • 反復スプリント能力が向上, 最大運動耐容能も改善
  • 呼吸筋の脱酸素量が低下 → 呼吸筋疲労が軽減されていることを示唆
  • 呼吸筋メタボリフレックス抑制の証拠と考えられる

考察|試合での意味

  1. 終盤でも走り負けしにくくなる → 反復スプリント能力が向上し、1対1や守備の戻りで差が出る
  2. 呼吸筋疲労の軽減が全身の余力を生む → 四肢筋への血流が保たれ、集中力の低下も防ぎやすい
  3. チームスポーツへの応用可能性 → サッカー以外のラグビー, バスケなど高強度間欠性運動にも応用可能

実生活へのヒント|サッカーに取り入れる方法

  • 練習日のウォームアップ前後に 30呼吸×2セット
  • 週5日, 6週間の継続で効果が出やすい
  • シーズン中は維持目的で週3〜4回に調整可能
  • 高強度インターバル走やスプリントドリルと併用するとより実戦的

まとめ

サッカーにおける呼吸筋トレーニングは、反復スプリント能力や運動耐容能を改善し、試合終盤での走り負けを防ぐ科学的根拠があります。筋トレや持久走だけでなく、呼吸筋の強化を取り入れることで90分間のパフォーマンスが底上げされます。


引用文献

Archiza B, Andaku DK, Caruso FCR, et al. Effects of inspiratory muscle training in professional women football players: a randomized sham-controlled trial. J Sports Sci. 2018;36(24):2720–2728.

この記事を書いた人 Wrote this article

editor2025

TOP