サッカー後の身体はどう消耗しているのか? ― 科学的エビデンスからみるリカバリーの重要性 - パフォーマンス向上の医学メディア

サッカー後の身体はどう消耗しているのか? ― 科学的エビデンスからみるリカバリーの重要性


サッカー後の筋グリコーゲンはどうなるのか?

サッカーは90分間の試合の中で、スプリント、方向転換、ジャンプ、パスやシュートなど高強度動作を繰り返す競技です。その結果、筋肉に蓄えられたグリコーゲンは大きく消耗します。

Mohrら(2022)のレビューでは、エリートサッカー選手の試合後に筋繊維の2/3〜3/4でグリコーゲンが不足状態になると報告されています【Mohr 2022】。特に速筋線維での消耗が顕著であり、後半にパフォーマンスが落ちる大きな要因とされています。

さらに、Pueyo-Ariasら(2024)のシステマティックレビューでは、試合後に筋グリコーゲンが約40%減少し、70〜80%の筋繊維が“空”または“ほぼ空”の状態であることが明らかにされています【Pueyo-Arias 2024】。

→ これらのデータから、サッカー試合後にはグリコーゲン回復のための栄養戦略が不可欠であることがわかります。


どれくらいのエネルギーを使うのか?

サッカーは有酸素運動と無酸素運動の両方が求められる「インターミッテントスポーツ」です。選手は90分間で10〜13 kmを走行し、その間に40回以上のスプリントを行います。

エネルギー消費は試合強度やポジションによって異なりますが、推定1,200〜1,500 kcal以上に及ぶとされ、特に炭水化物が主要なエネルギー源となります。

→ 消耗の中心はやはり「筋グリコーゲン」であり、回復を怠ると翌日の練習や次節の試合に影響が残ります。


実生活のリカバリー戦略

試合直後(0〜30分以内)

  • スポーツドリンクやフルーツジュース(高GI炭水化物)
  • バナナやゼリー飲料
  • チョコレートミルク(炭水化物+タンパク質を同時補給)

試合後1〜2時間

  • 主食:ご飯、パスタ、パン(炭水化物補給)
  • 主菜:鶏胸肉、魚、卵(タンパク質で筋修復)
  • 副菜:野菜スープ(電解質+水分補給)

翌日〜48時間

  • 継続的に炭水化物中心の食事を維持
  • 練習や次の試合までに筋グリコーゲンを完全に戻すため、3〜4食で合計6〜10 g/kg体重の炭水化物摂取が推奨されている(国際ガイドラインに基づく)

まとめ:サッカー後リカバリーの科学的視点

  • 筋グリコーゲン:試合後に約40%減少、70〜80%の筋繊維で枯渇(Pueyo-Arias 2024)
  • 筋繊維の影響:2/3〜3/4が不足し、後半パフォーマンス低下につながる(Mohr 2022)
  • 実践的戦略:試合直後の高GI炭水化物摂取+数日間にわたる炭水化物中心の食事継続が必須

→サッカーでは試合後に筋グリコーゲンが深刻に枯渇するため、**「直後の素早い補給」+「翌日以降も続ける回復食」**の両方がリカバリー成功の鍵です。


引用文献

  • Mohr M, Vigh-Larsen JF, Krustrup P. Muscle Glycogen in Elite Soccer – A Perspective on the Implication for Performance, Fatigue, and Recovery. Front Sports Act Living. 2022;4:866378.
  • Pueyo-Arias M, et al. Influence of Carbohydrate Intake on Different Parameters of Soccer Players’ Performance: Systematic Review. Nutrients. 2024;16(3):518.

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