高齢者の睡眠と運動の関係 ― 体内時計がカギ? - パフォーマンス向上の医学メディア

高齢者の睡眠と運動の関係 ― 体内時計がカギ?

高齢になると「眠りが浅い」「夜中に目が覚める」といった睡眠の悩みが増えます。同時に、体を動かす機会も減りがちです。では、睡眠と身体活動にはどんな関係があり、そこに「朝型・夜型」といった体内時計(クロノタイプ)がどう関わるのでしょうか?

米国ジョンズホプキンス大学の研究チーム(Huangら, 2023)は、高齢者の睡眠と身体活動の関連性、さらにクロノタイプの影響を調べました。


研究の方法

  • 対象:60〜85歳の地域在住高齢者116名
    • 認知症なし
    • 平均年齢 約72歳
    • 3割以上が軽度認知障害の可能性あり
  • 睡眠の測定
    • 客観的指標:アクチグラフで7〜9日間の睡眠時間・効率・覚醒時間を計測
    • 主観的指標:ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)で睡眠の自己評価
  • 身体活動:高齢者身体活動尺度(PASE)で調査
  • クロノタイプ:朝型か非朝型かを判定(Morningness–Eveningness Questionnaire)
  • 統計解析:年齢・BMI・慢性疾患数などを調整した重回帰分析

主な結果

  1. 睡眠と身体活動の関連
    • 主観的に良い睡眠(低いPSQIスコア) → 活動量が多い
    • 睡眠効率が高い(ベッドで寝ていた割合が大きい) → 活動量が多い
    • 睡眠時間が短め(ただし効率が良い場合) → 活動量が多い
    • 夜中の覚醒(WASO)が長い/入眠が遅い → 活動量が少ない
  2. クロノタイプの効果
    • 「朝型」の人では、睡眠の質が悪くても活動量の低下が抑えられていた
    • → 朝型は生活リズムが整いやすく、活動的でいられる可能性

考察

  • 睡眠の「長さ」よりも「効率」や「質」が活動量に影響
  • 高齢者では、短めでも効率よく眠れることが重要
  • 朝型は悪い睡眠の影響を受けにくい → 体内時計が緩衝役の可能性
  • 主観的評価と客観的測定は必ずしも一致せず、両方を組み合わせることが大切

実生活へのヒント

  • 規則正しい起床・就寝時間を心がける(朝型リズムを意識)
  • 睡眠の「量」より「質」を重視(昼間に体を動かし、夜に熟睡)
  • アクチグラフなどの客観的計測と、自分の体感の両方を大事に
  • 医療現場でも、高齢者の睡眠をもっと積極的に評価・支援する必要あり

まとめ

Huangらの研究は、高齢者の活動量は睡眠の効率や質と密接に関係し、体内時計のタイプがその関係を調整することを示しました。

つまり、「よく眠る」だけでなく「朝型生活を意識する」ことが、健康で活動的な高齢期を送るカギかもしれません。


引用文献

Huang J, Li M, McPhillips MV, Lukkahatai N, Li J.

Association of Sleep and Physical Activity Among Older Adults and the Moderation of Chronotype.

Int J Aging Hum Dev. 2023;97(1):35–51. doi:10.1177/00914150221128974

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editor2025

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