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「心拍変動で賢くトレーニング!最新研究が示すパフォーマンス向上の秘訣」
HRV(心拍変動)でわかる!回復度に応じた最適トレーニング法
「今日は走るべき?それとも休むべき?」――多くのランナーやアスリートが抱える疑問です。心拍変動(HRV: Heart Rate Variability)を利用すれば、その日の体調や回復度を数値で把握し、最適なトレーニング判断ができるかもしれません。近年の研究では、HRVを活用したトレーニングがVO₂maxや持久力の向上につながることが示され、競技パフォーマンスの最適化に注目が集まっています。
研究の概要
- 研究チームと発表年 Kiviniemiら(2007, フィンランド, Oulu大学) Vesterinenら(2016, フィンランド, Jyväskylä大学)
- 対象者 Kiviniemiら: 健康な男女40名 Vesterinenら: 持久系ランナー40名
- 方法 HRVを毎朝測定し、その値に応じて「高強度 or 低強度 or 休養」を決定。比較対象群は、事前に決められた固定プログラムに従ってトレーニングを実施。
- 期間 Kiviniemi: 8週間のトレーニング介入 Vesterinen: 4週間のランニングプログラム
主な結果
Kiviniemiら(2007)
- HRVに基づいた調整群は、固定プログラム群に比べてVO₂maxの改善が大きかった
- 最大作業能力(peak power output)も有意に向上
Vesterinenら(2016)
- HRV群は持久力(3km走タイム)が有意に改善
- 疲労やオーバートレーニング兆候の出現が少なかった
考察
HRVを使ったトレーニングは、「疲れている日は軽め、調子が良い日は強め」といった柔軟な調整を可能にします。これにより、身体が高い効果を発揮できるタイミングを最大限に活かせると考えられます。自律神経系の働きが回復状態を正確に反映しているため、従来の画一的なプログラムよりも効率的に持久力が向上すると考えられます。過去の研究とも整合性があり、特に「疲労管理」「オーバートレーニング予防」という点で有用性が強調されています。
実生活へのヒント
- HRVを測定できるアプリやウェアラブルデバイスを活用する
- 「数値が低い=回復していない日」には無理せず軽めのジョグや休養にあてる
- 数値が高い日はインターバルやテンポ走など負荷の高いトレーニングを実施
- 毎朝同じ条件(起床直後、安静時)で測定するのがポイント
まとめ
心拍変動を活用したトレーニングは、従来の「決まったプログラム」に比べて、効率的にパフォーマンスを高め、疲労を抑える可能性が示されています。自分の体調を「数値化」して判断できるため、競技者はもちろん、市民ランナーにも取り入れやすい方法といえるでしょう。
引用文献
- Kiviniemi AM, Hautala AJ, Kinnunen H, et al. Daily exercise prescription on the basis of HR variability among men and women. Scand J Med Sci Sports. 2007;17(3):267-275.
- Vesterinen V, Nummela A, Heikura I, et al. Individual endurance training prescription with heart rate variability. Med Sci Sports Exerc. 2016;48(7):1347-1354.