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高タンパク質食のリスクと注意点

はじめに

「高タンパク質食」は減量や筋肉維持に効果的といわれますが、多ければ多いほど良いわけではありません。腎臓や心血管、がんリスク、死亡率への影響を指摘する研究もあります。本記事では、科学的報告とガイドラインから見た安全な摂取範囲について解説します。


高タンパク質食と健康リスク

米国の大規模健康調査(NHANES III、Levineら 2014年)では、50歳以上の男女6,000人超を追跡し、たんぱく質摂取量と健康リスクの関係を調べました。

  • 中年期(50〜65歳)
    • たんぱく質摂取量が高い(総エネルギーの20%以上)の人は、死亡リスクが約75%高く、がん死亡リスクが約4倍高い
    • 主に動物性たんぱく質の過剰摂取がリスク上昇と関連
  • 高齢期(65歳以上)
    • 高たんぱく摂取は、むしろ死亡リスクやがんリスクが低下 → 加齢で筋肉量が減る時期は、十分なたんぱく質が必要と考えられる

この研究は、年齢によって適正なたんぱく質量が異なる可能性を示しています。


腎機能への影響

健康な人であれば、高たんぱく質食が短期間で腎機能を悪化させるという明確な証拠はありません。ただし、慢性腎臓病(CKD)や腎機能低下がある場合は注意が必要です。腎臓にかかる負担を減らすため、医師や管理栄養士の指導のもとで摂取量を調整します。


安全な摂取範囲

米国の食事摂取基準(Dietary Guidelines for Americans)では、健康な成人におけるたんぱく質摂取の推奨範囲は**総エネルギーの10〜35%**です。

  • 例)1日2,000 kcalの人 → 50〜175 gのたんぱく質が目安
  • 筋力トレーニングや高齢期は、やや上限寄りの摂取が望ましい場合もあります

まとめ

  • 高タンパク質食は減量や筋肉維持に有効だが、過剰摂取は年齢や健康状態によってリスクになり得る
  • 中年期は動物性たんぱく質の過剰に注意し、植物性たんぱく質や魚を増やす工夫を
  • 腎疾患のある人は医療者の管理下で摂取量を調整
  • 健康な成人は、**総エネルギーの10〜35%**の範囲が目安

参考文献

  1. Levine ME, et al. Low protein intake is associated with a major reduction in IGF-1, cancer, and overall mortality in the 65 and younger but not older population. Cell Metab. 2014;19(3):407–417.
  2. U.S. Department of Health and Human Services and U.S. Department of Agriculture. Dietary Guidelines for Americans, 2011

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