「ウォームアップに最適なストレッチが判明!動的ストレッチの意外な効果とは?」 - パフォーマンス向上の医学メディア

「ウォームアップに最適なストレッチが判明!動的ストレッチの意外な効果とは?」


ストレッチで本当にパフォーマンスは変わるのか?

日常的に「ストレッチって本当に効果あるの?」と疑問に思うことはありませんか?

運動する前にストレッチをしても、かえってパフォーマンスが落ちるのでは…と心配する方もいるでしょう。その一方で、練習後にはゆったりと静的に伸ばすことでリカバリーに役立つとされます。

本記事では、動的ストレッチと静的ストレッチの違いや、それぞれいつどのように取り入れるのがパフォーマンス向上に効果的か、最新研究をもとにわかりやすく解説します。


研究の概要(ストレッチに関するメタ分析)

  • 研究チームと発表年 Esteban‑García らによるメタ分析(Applied Sciences誌, 2024年)。
  • 対象者 身体活動を行う成人男女。16件の研究を対象に、ジャンプパフォーマンス(垂直跳び)および下肢の可動域(ROM)への影響を比較。
  • 方法 システマティックレビューおよびメタ分析。静的ストレッチ(SS)と動的ストレッチ(DS)がウォームアップに含まれた条件下で、その後のジャンプ高さと可動域を比較した。
  • 期間・デザイン 主に急性効果を対象。ジャンプ・可動域の即時的変化を指標としており、運動前直後に測定。

主な結果

  • ジャンプパフォーマンス(垂直跳び)
    • 静的ストレッチ:有意ではないが少し減少傾向(SMD ≒ –0.17)
    • 動的ストレッチ:有意ではないが増加傾向(SMD ≒ +0.12)
    • 両者の間で統計的に有意な差あり:動的ストレッチの方がジャンプに有利
  • 可動域(ROM)
    • 静的ストレッチと動的ストレッチ、どちらも有意に改善(それぞれSMD ≒ 0.40、0.48)
    • 両者間で差はなし(p = 0.73)

補足:他の研究による知見

  • 静的ストレッチ は可動域を高める効果がありつつ、動的ストレッチより強い柔軟性改善が得られる場合があるが、ウォームアップの一部として単独で使用するとスプリントやジャンプに悪影響を及ぼすことがある
  • 一方、動的ストレッチは血流や筋温を上げ、力や俊敏性のパフォーマンスを高める自然な動きを促すことで、ウォームアップに適している

考察:結果が意味することとそのメカニズム

研究結果からわかるのは、動的ストレッチをウォームアップに取り入れることで、パフォーマンス(特にジャンプ)や可動域を効果的に高められる可能性があるということです。一方、静的ストレッチも柔軟性向上には有効ですが、運動前の取り入れはパフォーマンスを阻害するリスクがあります。

メカニズム想定

  • 動的ストレッチ:筋温・血流向上、神経系の活性化、筋の反応速度向上 → 力発揮や動作のスムーズさ向上。
  • 静的ストレッチ:筋軟部組織の伸張性向上 → 可動域の改善。ただし、一時的に筋の弾性や反発性を低下させる可能性がある。

過去研究とも整合し、特に動的ストレッチのウォームアップへの導入は多くのスポーツ現場で支持されています。


実生活へのヒント

  • 運動前に取り入れたい動的ストレッチの例
  • ・レッグスイング、ハイニー、バットキック、ランジ、アームサークルなどの軽いダイナミックな動き。
  • 運動前に5~10分程度の動的ストレッチで筋温を上げ、可動域を自然に広げる。
  • 運動後やクールダウンにおすすめの静的ストレッチ
  • ・各筋群を15~60秒保持する静的ストレッチで、リカバリーや柔軟性維持を促進。
  • ・ただし、運動前に静的ストレッチを長時間行うとパフォーマンス低下のリスクあり。
  • 注意点
    • 静的ストレッチの長時間保持(例:1分以上)は、筋力や爆発力の低下を招く可能性があります。運動前は短めに留めましょう(理想は運動後)
    • 個人の体の状態(怪我の既往や柔軟性の程度)に応じて、無理せず医師・専門家の指導のもと取り入れてください。

まとめ

動的ストレッチは、ウォームアップとして運動前に取り入れることで、パフォーマンス(特にジャンプ力)と可動域の向上に効果的である傾向がメタ分析で示されています。一方、静的ストレッチは柔軟性には有効だが、運動前の使用にはパフォーマンス低下のリスクがあるため、主にクールダウン時に取り入れるのが適切といえます。


引用文献

  1. Esteban‑García, P. et al. “Does the Inclusion of Static or Dynamic Stretching in the Warm‑Up Routine Improve Jump Height and ROM in Physically Active Individuals? A Systematic Review with Meta‑Analysis.” Applied Sciences, 2024.
  2. Samson, M. et al. “Effects of Dynamic and Static Stretching Within General …” (2012).

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