夜の照明が子どもの睡眠ホルモンに与える影響 - パフォーマンス向上の医学メディア

夜の照明が子どもの睡眠ホルモンに与える影響

私たちの体内時計は、光によって強く調節されています。特に「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンは、夜に分泌が増えることで眠気を誘います。では、現代の室内照明やデジタル機器の光が、子どものメラトニンにどのような影響を与えているのでしょうか?

日本の研究チーム(Higuchiら, 2014)は、夜の光が子どもと大人のメラトニンに与える影響を直接比較しました。


研究の背景

  • メラトニンは脳の松果体から夜間に分泌され、体を「夜モード」に切り替える役割を持つ
  • 強い光が当たるとメラトニン分泌が抑えられることは知られていた
  • しかし、子どもが大人より光に敏感かどうかは、これまで十分に調べられていなかった

方法

  • 参加者:小学生33人(平均9.2歳)、健康な大人29人(平均41.6歳)
  • 実験1(研究施設での比較)
    • 条件①:暗い照明(30 lux以下)
    • 条件②:やや明るい照明(580 lux、蛍光灯)
    • 就寝前の唾液を採取し、メラトニン濃度を測定
    • 瞳孔の大きさも測定
  • 実験2(家庭での比較)
    • 条件①:研究施設で暗い照明(30 lux以下)
    • 条件②:家庭での通常の室内照明(平均約140 lux)
    • 唾液サンプルを家庭で採取

結果

実験1:明るい照明(580 lux)の影響

  • 子ども:メラトニンが平均88.2%抑制
  • 大人:46.3%抑制
  • 子どもの方が 約2倍敏感
  • 瞳孔が大きいため、より多くの光が眼に入ることが一因

実験2:家庭の照明(約140 lux)の影響

  • 子ども:51.6%抑制(p < 0.05)
  • 大人:26.7%抑制(有意差なし)
  • 普通の家庭の明るさでも、子どものメラトニンは大きく低下

考察

  • 子どもは 夜の光に特に敏感
  • 原因の一部は、
    • 大きな瞳孔(多くの光が網膜に届く)
    • 透明度の高い水晶体(短波長光を通しやすい)
  • 大人よりも短時間でメラトニンが抑え込まれる可能性

実生活への示唆

  • 子ども部屋の照明は控えめに
    • 就寝前は暖色系で100 lux以下が望ましい
  • スマホ・タブレット・ゲーム機の使用を控える
    • LEDディスプレイは特に短波長光が強く、メラトニン抑制を助長
  • 寝る1時間前は「暗めの環境」に
    • 睡眠の質を高め、生活リズムを整える

まとめ

Higuchiらの研究は、夜の光が子どものメラトニンを大人の約2倍抑制することを明らかにしました。

つまり、家庭の明かりや電子機器の光も、子どもの睡眠に大きな影響を及ぼす可能性があります。


引用文献

Higuchi S, Nagafuchi Y, Lee S, Harada T.

Influence of Light at Night on Melatonin Suppression in Children.

J Clin Endocrinol Metab. 2014;99(9):3298–3303. doi:10.1210/jc.2014-1629

この記事を書いた人 Wrote this article

editor2025

TOP