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単糖と複合糖質は運動前にどちらが有効?高校生を対象とした研究からの新知見
競技前に何を食べるかで結果が変わる――単糖か?複合糖質か?
「試合前に食べるなら、おにぎり? それともバナナやチョコレート?」
運動前の食事はパフォーマンスに直結する大きなテーマです。特に炭水化物の種類、つまり単糖類と複合糖質で効果が違うのかどうかは、多くのアスリートや指導者が気になるポイントでしょう。
今回は、高校生を対象にした実験的研究から、運動前30分に単糖または複合糖質を摂取した際に、実際にどのようなパフォーマンスの違いが出るのかを紹介します。
研究の概要
- 研究チームと発表年 Journal of Emerging Investigators にて2022年に発表された研究。
- 対象者 高校生を中心とした若年層アスリート。
- 方法 被験者は3群に分けられ、
- 運動30分前に単糖を摂取
- 運動30分前に複合糖質を摂取
- 何も摂取しない(コントロール) の条件で、ベンチプレス、アブドミナルクランチ、1マイル走といったパフォーマンステストを行った。
- 期間 クロスオーバーデザインで実施。各条件を比較。
主な結果
- 単糖摂取群が最も高いパフォーマンスを示した
- 1マイル走のタイムが改善
- ベンチプレスやクランチの持久力も増加
- 複合糖質群もコントロールより改善傾向 ただし、短時間の高強度運動においては単糖の方が優れていた。
- コントロール群は最も低いパフォーマンス 運動前のエネルギー補給の重要性が確認された。
考察
この研究は、短時間の無酸素系・有酸素系運動のいずれにおいても、単糖摂取が直前のパフォーマンスに有利であることを示しています。
考えられるメカニズムとしては:
- 単糖は消化・吸収が速く、血糖値とインスリンを短時間で上げる
- 筋肉に即効的に利用可能なエネルギーを供給できる
- そのため、競技開始直後から最大限のパフォーマンスを発揮できる
一方で、複合糖質は消化が遅く、スタミナ維持には有効だが、30分という短時間では効果が十分に出にくいと考えられます。
実生活へのヒント
- 短距離走や試合直前の補食 → バナナ、ゼリー飲料、スポーツドリンクなどの単糖類が有効
- 長時間の練習やマラソン前 → 数時間前におにぎり、パスタ、オートミールなどの複合糖質が適切
- 重要なのは「時間軸に応じた使い分け」。運動直前は単糖、数時間前は複合糖質と覚えるとわかりやすいです。
まとめ
この研究は、短時間高強度運動においては単糖類の摂取が有利であることを示しました。
つまり、「試合直前に食べるなら速効性のある単糖」、「長時間前に食べるなら持続性のある複合糖質」という実践的な指針が導けます。
引用文献
Yoo J, Patel M, Luo J, et al. The effect of carbohydrate type consumed 30 minutes before exercise on anaerobic performance in high school students. Journal of Emerging Investigators. 2022.