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カフェインは筋力・瞬発力を高める?最新メタ解析が示した科学的根拠
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カフェインはスポーツパフォーマンス向上の代表的サプリメントとして知られていますが、筋力や瞬発力(パワー)に対する効果は必ずしも明確ではありません。本記事では、2018年に発表された系統的レビューとメタ解析を紹介し、カフェインが筋力・パワーに与える科学的影響を解説します。
研究の概要
- 研究チームと発表年 オーストラリア・ビクトリア大学、米国ノースカロライナ大学などの研究者による国際共同研究。2018年『Journal of the International Society of Sports Nutrition』に掲載。
- 対象者
- 筋力試験:10件の研究、計149名(男性116名、女性33名)
- パワー試験:10件の研究、計145名(男性116名、女性29名) 主に思春期後期〜若年成人、トレーニング経験者および未経験者を含む。
- 方法
- 筋力:最大筋力(1RM)テスト(ベンチプレス、スクワット、レッグプレスなど)
- パワー:ジャンプ系テスト(カウンタームーブメントジャンプ、スクワットジャンプなど)
- 投与形態:カプセル、液体、ジェルなど(2〜7 mg/kgを主に運動60分前に投与)
- デザイン:無作為化クロスオーバー(二重盲検が中心)
主な結果
1. 筋力への効果
- 全体:有意な効果(SMD = 0.20、95%CI: 0.03–0.36、p = 0.023)
- 部位別:
- 上半身:有意に改善(SMD = 0.21、p = 0.026)
- 下半身:有意差なし(SMD = 0.15、p = 0.147)
2. 筋パワーへの効果
- 有意に改善(SMD = 0.17、95%CI: 0.00–0.34、p = 0.047)
- 特にアスリート群で効果が顕著(SMD = 0.23、p = 0.025)
考察
- 意味すること カフェインは「小さいが有意な効果」を筋力とパワーの両方に与えることが確認されました。特に上半身筋力やジャンプ力といったパフォーマンスに効果が期待できます。競技場面では、このわずかな改善でも勝敗を左右する可能性があります。
- メカニズム
- 中枢神経系でのアデノシン受容体拮抗 → 覚醒度向上、疲労感の軽減
- モーターユニット動員数の増加 → 瞬発的な力発揮をサポート
- 痛覚・努力感の低下 → 高強度トレーニング時のパフォーマンス維持
- 過去研究との違い それ以前のレビューでは有意な効果が見られなかったが、本研究では最新データを統合し、上半身筋力とジャンプ力にポジティブな効果を明示。
実生活へのヒント
- 摂取量の目安:体重1kgあたり3〜6 mg(例:60kgで180〜360 mg)。
- タイミング:トレーニングや試合の約60分前に摂取するのが効果的。
- 注意点:
- 個人差が大きい(カフェイン代謝の速さ、普段の摂取習慣など)。
- 下半身の大筋群には効果が出にくい場合あり。
- 不眠・動悸・不安感など副作用のリスクに留意。
まとめ
2018年のメタ解析によると、カフェイン摂取は上半身の筋力とジャンプ力(パワー)を小さいながら有意に高めることが明らかになりました。筋トレや瞬発力が問われる競技において、カフェインは「あと少し」を引き出すエルゴジェニックエイドとなり得ます。
引用文献
Grgic J, Trexler ET, Lazinica B, Pedisic Z. Effects of caffeine intake on muscle strength and power: a systematic review and meta-analysis. J Int Soc Sports Nutr. 2018;15:11.