カフェインはeスポーツの「反応速度」と「命中精度」を上げる?最新RCTでわかったこと - パフォーマンス向上の医学メディア

カフェインはeスポーツの「反応速度」と「命中精度」を上げる?最新RCTでわかったこと


試合前のコーヒーは強化アイテムなのか?

「本番前にコーヒーを飲むとAimが冴える気がする。」eスポーツ、とくにFPSでは反応時間・視覚探索・命中精度が勝敗を分けます。最新のクロスオーバー試験は、3 mg/kgのカフェインがこうした能力に与える実際の影響を検証しました。本記事では、その研究デザインと主要な結果、実装のコツをわかりやすく解説します。


研究の概要(デザインと対象)

  • 研究チームと発表年. 台湾の研究グループによる単盲検・無作為化クロスオーバー試験。2024年にScientific Reportsに掲載。
  • 対象者. 国際大会経験のある男性エリートFPS選手9名(平均20.8歳), 週5日以上のトレーニング歴(平均2.8年)。
  • 方法. 体重当たり3 mg/kgのカフェインまたはプラセボを試験1時間前に単回摂取。
    • 認知課題: Stroop課題(一致/不一致条件), 視覚探索課題(アイテム数5, 10, 15, 20)。
    • パフォーマンス課題: 3D Aimトレーナーで射撃能力(Kill ratio, Accuracy, Average time to target)を評価。
    • 全参加者は240 Hz以上のモニターと1 ms応答のマウスを使用。
  • 期間/デザイン. フェーズ間は7日間のウォッシュアウトを設定し, 事前に3–5回の慣熟セッションを実施。主要評価項目は認知成績, 副次は射撃成績。

主な結果(要点を箇条書き)

認知機能

  • Stroop課題・一致条件の反応時間が有意に短縮(P = 0.023, 効果量d = 1.2). 不一致条件は有意差なし(P = 0.478).
  • 視覚探索20アイテム条件で反応時間が有意に短縮(P = 0.004, d = 0.95). 5, 10, 15アイテムでは有意差なし。

射撃パフォーマンス(3D Aimトレーナー)

  • Kill ratioが上昇(P = 0.020, d = 0.96).
  • Accuracyが上昇(P = 0.008, d = 1.60).
  • Average time to targetが短縮(P = 0.001, d = 1.96). いずれもカフェイン条件 > プラセボ条件で改善。

考察(なぜ効くのか, どう解釈するか)

  • 意味すること. 競技に直結する視覚探索の高速化反応時間の短縮, そして命中精度の向上が示されました。特に高負荷の探索条件(20アイテム)で差が出やすく, 試合の複雑場面ほど恩恵が現れやすい可能性。
  • 想定メカニズム. カフェインのアデノシン受容体拮抗による中枢神経賦活で覚醒・注意(vigilance)を高め, 認知処理速度を上げた結果と考えられます。
  • 過去研究との整合/差異. 先行研究でもeスポーツ/射撃場面で反応時間短縮・命中向上が報告されていますが, 本研究はStroopや視覚探索での改善Aim実成績の向上を同時に示し, 認知→射撃の橋渡しを補強しています。

実生活へのヒント(すぐ使える実装法)

  • 用量. 目安は3 mg/kg(例: 60 kgで約180 mg, 缶コーヒー1–2本程度). 初回は少なめから。
  • タイミング. 試合/練習の約60分前に摂取。カプセル, コーヒー, ガムなど形態は任意。
  • 注意点. 個人差が大きく, 不安感・動悸・振戦などが出る体質もあります。就寝前は避ける, カフェイン習慣の少ない人は特に事前に練習でテストしてから本番で使うのが安全。

まとめ(要点の再掲)

  • *3 mg/kgのカフェインを1時間前に摂ると, エリートFPS選手で「反応時間・視覚探索・命中精度」が有意に向上。**特に複雑場面での探索と射撃の質を底上げする可能性が示されました。運用は少量から, 本番前に必ずリハーサルを。

引用文献

Wu S-H, Chen Y-C, Chen C-H, Liu H-S, Liu Z-X, Chiu C-H. Caffeine supplementation improves the cognitive abilities and shooting performance of elite e-sports players: a crossover trial. Scientific Reports. 2024;14:2074.

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