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寝室の明かりがあなたの眠りを浅くする ― 韓国からの研究報告
夜、豆電球や常夜灯をつけたまま寝る人は少なくありません。しかしその小さな光が、実は眠りの質を大きく損なっている可能性があることをご存知でしょうか?
韓国のSamsung Medical Centerの研究チーム(Choら, 2013)は、就寝中の低照度光が睡眠構造と脳の活動に与える影響を調べました。
研究の目的
人工照明は便利な一方で、「光害」として体に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。研究者たちは、常夜灯程度の光でも睡眠が浅くなるのか、さらに脳波にどんな変化が起きるのかを検証しました。
方法
- 対象:健康な若年成人10名(平均年齢27歳)
- 条件:
- 完全な暗闇での睡眠(lights off)
- 就寝中に40 luxの蛍光灯を頭上1mから照射した状態での睡眠(lights on)
- 測定:
- 一晩のポリソムノグラフィ(PSG, 脳波・心電図・筋電図を含む)
- 睡眠段階(N1, N2, SWS, REM)の割合
- 脳波の周波数解析(徐波・スピンドル・シータなど)
主な結果
睡眠構造の変化
- N1(浅い睡眠):8.6% → 10.2% (有意に増加, p=0.04)
- SWS(徐波睡眠=深い眠り):15.1% → 11.3% (有意に減少, p<0.001)
- 覚醒回数(Arousal Index):9.1 → 12.9回/時 (p=0.003)
- 総睡眠時間・睡眠効率には大きな差なし
脳波の変化
- NREM睡眠:
- 徐波活動(0.5–4 Hz)とスピンドル波(10–16 Hz)が有意に減少
- REM睡眠:
- シータ波(4–8 Hz)が有意に減少
- → 睡眠の深さと安定性を示す波が抑制されていた
考察
- 常夜灯程度の低照度光でも、睡眠は浅くなり覚醒が増える
- その背景には、光がメラトニン分泌を抑制し、脳内ネットワークの同期性を乱すことがあると考えられる
- 特に徐波睡眠やスピンドルは記憶固定や脳の回復に重要であり、光による抑制は認知機能や健康への悪影響につながる可能性がある
実生活への示唆
- 寝室はできるだけ暗く:スタンバイライトや豆電球は消す
- アイマスクや遮光カーテンを利用:外光や電化製品の光を遮断
- 子ども部屋にも注意:怖がり対策には低照度でも光を避け、代わりに間接照明やドアの隙間の光を利用
まとめ
Choらの研究は、40 lux程度の小さな明かりでも睡眠を浅くし、脳波活動に悪影響を与えることを明らかにしました。
つまり「寝室はできるだけ暗く」が、質の高い眠りを守るカギなのです。
引用文献
Cho JR, Joo EY, Koo DL, Hong SB.
Let there be no light: the effect of bedside light on sleep quality and background electroencephalographic rhythms.
Sleep Medicine. 2013;14(12):1422–1425. doi:10.1016/j.sleep.2013.09.007