「アクティブリカバリーは疲労回復を早める?乳酸除去に関する最新研究まとめ」 - パフォーマンス向上の医学メディア

「アクティブリカバリーは疲労回復を早める?乳酸除去に関する最新研究まとめ」


疲労回復は休むより動く方が早い?

ハードな運動の後、「じっと休んだ方がいいのか」「軽く動いた方がいいのか」と迷った経験はありませんか?

疲労回復のカギを握るのが、血中にたまった乳酸の除去スピードです。乳酸が素早く代謝されると、次の運動や試合でのパフォーマンス維持につながります。

本記事では、最新の研究から明らかになってきた アクティブリカバリーとパッシブリカバリーの違い をわかりやすく解説します。


研究の概要

1. Blood lactate clearance after maximal exercise depends on active recovery intensity

  • 対象:成人を対象とした運動生理学実験
  • 方法:最大運動後に異なる強度(低・中・高強度)のアクティブリカバリーを実施し、乳酸除去速度を比較
  • 結果:アクティブリカバリーはパッシブよりも有効で、乳酸閾値付近(中強度)でのリカバリーが最も効率的であった

2. Effectiveness of two different recovery process on blood lactate removal pattern of soccer players

  • 対象:U-17ジュニアナショナルサッカー選手
  • 方法:激しい運動後にアクティブリカバリー(軽いジョグ)とパッシブリカバリー(安静)を比較
  • 結果:アクティブリカバリーでは20分以内に乳酸濃度が大幅に低下、60分後には約96%が除去された。一方、パッシブでは91%にとどまった

3. Effect of recovery interventions on lactate removal and subsequent performance. International Journal of Sports Medicine

  • 対象:持久系アスリート
  • 方法:アクティブリカバリー、パッシブリカバリー、マッサージなど複数の回復手段を比較
  • 結果:アクティブリカバリーが最も乳酸除去を早め、さらに次のパフォーマンステスト(スプリントやパワー出力)で成績が良好であった

4. Effect of Active Versus Passive Recovery on Performance During Intrameet Swimming Competition

  • 対象:競泳選手
  • 方法:競技中のインターバルでアクティブリカバリー(軽いスイム)とパッシブリカバリーを比較
  • 結果:アクティブリカバリー群は次のレースでもタイムが維持されやすく、パフォーマンス低下が小さいことが示された

主な結果(総合)

  • アクティブリカバリーは、乳酸除去速度を有意に高める
  • 強度は「低すぎても高すぎても非効率」で、**中強度(乳酸閾値付近)**が最適
  • サッカーや競泳など競技種目にかかわらず、次のパフォーマンス維持に有効
  • パッシブリカバリーは休養効果はあるが、乳酸除去や次の試技への即時的効果は劣る

考察

これらの研究は共通して、「疲労回復=完全休養」ではないことを示しています。

  • メカニズム アクティブリカバリーにより血流が促進され、乳酸や代謝産物の除去が早まる。また、筋温上昇や酸素供給が続くことで、エネルギー代謝が効率化される。
  • 過去研究との整合性 古くから「アクティブリカバリーは乳酸除去に有効」とされてきましたが、近年のメタ分析やスポーツ別研究でもその有効性が支持されている。

実生活へのヒント

  • 理想的な強度:心拍数や呼吸がやや上がる程度(Borgスケールで「楽~ややきつい」11~13)
  • 方法の例: ・ランニング後 → 軽いジョグやウォーキング10〜15分 ・水泳後 → 軽めのスイムダウン ・サッカーやバスケ後 → 軽いランや動的ストレッチ
  • 注意点:体調不良や怪我のある場合は無理せずパッシブリカバリーを選択する

まとめ

  • アクティブリカバリーは乳酸除去とパフォーマンス維持に有効
  • 強度は「中程度」が最も効果的
  • サッカーや水泳など種目を問わず効果が報告されており、実生活にも応用可能

つまり、「軽く動きながら休む」ことが、次のパフォーマンスを高めるカギになります。


引用文献

  1. Devlin, J. T. Blood lactate clearance after maximal exercise depends on active recovery intensity.
  2. Farooque, M. et al. Effectiveness of two different recovery process on blood lactate removal pattern of soccer players.
  3. Monedero, J., Donne, B. Effect of recovery interventions on lactate removal and subsequent performance. Int J Sports Med.
  4. Hinzpeter, J. et al. Effect of Active Versus Passive Recovery on Performance During Intrameet Swimming Competition.

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