目次
Outline
- 1. 「アクティブリカバリーは疲労回復を早める?乳酸除去に関する最新研究まとめ」
- 1-1. 疲労回復は休むより動く方が早い?
- 1-2. 研究の概要
- 1-2-1. 1. Blood lactate clearance after maximal exercise depends on active recovery intensity
- 1-2-2. 2. Effectiveness of two different recovery process on blood lactate removal pattern of soccer players
- 1-2-3. 3. Effect of recovery interventions on lactate removal and subsequent performance. International Journal of Sports Medicine
- 1-2-4. 4. Effect of Active Versus Passive Recovery on Performance During Intrameet Swimming Competition
- 1-3. 主な結果(総合)
- 1-4. 考察
- 1-5. 実生活へのヒント
- 1-6. まとめ
- 1-7. 引用文献
「アクティブリカバリーは疲労回復を早める?乳酸除去に関する最新研究まとめ」
疲労回復は休むより動く方が早い?
ハードな運動の後、「じっと休んだ方がいいのか」「軽く動いた方がいいのか」と迷った経験はありませんか?
疲労回復のカギを握るのが、血中にたまった乳酸の除去スピードです。乳酸が素早く代謝されると、次の運動や試合でのパフォーマンス維持につながります。
本記事では、最新の研究から明らかになってきた アクティブリカバリーとパッシブリカバリーの違い をわかりやすく解説します。
研究の概要
1. Blood lactate clearance after maximal exercise depends on active recovery intensity
- 対象:成人を対象とした運動生理学実験
- 方法:最大運動後に異なる強度(低・中・高強度)のアクティブリカバリーを実施し、乳酸除去速度を比較
- 結果:アクティブリカバリーはパッシブよりも有効で、乳酸閾値付近(中強度)でのリカバリーが最も効率的であった
2. Effectiveness of two different recovery process on blood lactate removal pattern of soccer players
- 対象:U-17ジュニアナショナルサッカー選手
- 方法:激しい運動後にアクティブリカバリー(軽いジョグ)とパッシブリカバリー(安静)を比較
- 結果:アクティブリカバリーでは20分以内に乳酸濃度が大幅に低下、60分後には約96%が除去された。一方、パッシブでは91%にとどまった
3. Effect of recovery interventions on lactate removal and subsequent performance. International Journal of Sports Medicine
- 対象:持久系アスリート
- 方法:アクティブリカバリー、パッシブリカバリー、マッサージなど複数の回復手段を比較
- 結果:アクティブリカバリーが最も乳酸除去を早め、さらに次のパフォーマンステスト(スプリントやパワー出力)で成績が良好であった
4. Effect of Active Versus Passive Recovery on Performance During Intrameet Swimming Competition
- 対象:競泳選手
- 方法:競技中のインターバルでアクティブリカバリー(軽いスイム)とパッシブリカバリーを比較
- 結果:アクティブリカバリー群は次のレースでもタイムが維持されやすく、パフォーマンス低下が小さいことが示された
主な結果(総合)
- アクティブリカバリーは、乳酸除去速度を有意に高める
- 強度は「低すぎても高すぎても非効率」で、**中強度(乳酸閾値付近)**が最適
- サッカーや競泳など競技種目にかかわらず、次のパフォーマンス維持に有効
- パッシブリカバリーは休養効果はあるが、乳酸除去や次の試技への即時的効果は劣る
考察
これらの研究は共通して、「疲労回復=完全休養」ではないことを示しています。
- メカニズム アクティブリカバリーにより血流が促進され、乳酸や代謝産物の除去が早まる。また、筋温上昇や酸素供給が続くことで、エネルギー代謝が効率化される。
- 過去研究との整合性 古くから「アクティブリカバリーは乳酸除去に有効」とされてきましたが、近年のメタ分析やスポーツ別研究でもその有効性が支持されている。
実生活へのヒント
- 理想的な強度:心拍数や呼吸がやや上がる程度(Borgスケールで「楽~ややきつい」11~13)
- 方法の例: ・ランニング後 → 軽いジョグやウォーキング10〜15分 ・水泳後 → 軽めのスイムダウン ・サッカーやバスケ後 → 軽いランや動的ストレッチ
- 注意点:体調不良や怪我のある場合は無理せずパッシブリカバリーを選択する
まとめ
- アクティブリカバリーは乳酸除去とパフォーマンス維持に有効
- 強度は「中程度」が最も効果的
- サッカーや水泳など種目を問わず効果が報告されており、実生活にも応用可能
つまり、「軽く動きながら休む」ことが、次のパフォーマンスを高めるカギになります。
引用文献
- Devlin, J. T. Blood lactate clearance after maximal exercise depends on active recovery intensity.
- Farooque, M. et al. Effectiveness of two different recovery process on blood lactate removal pattern of soccer players.
- Monedero, J., Donne, B. Effect of recovery interventions on lactate removal and subsequent performance. Int J Sports Med.
- Hinzpeter, J. et al. Effect of Active Versus Passive Recovery on Performance During Intrameet Swimming Competition.