前回の記事では、昼寝の効果について書きました。実際には昼寝はどれくらいとるべきなのでしょうか?
実は、たった10〜20分の昼寝が、あなたの集中力・記憶力を驚くほど回復させることが、最新の科学的研究で示されています。今回は、短時間の昼寝でも十分な効果があるというエビデンスと、最も効果的な昼寝の仕方について紹介します。
【本文】
■ 長い昼寝より“短い昼寝”が良い?
「昼寝って30分以上しないと意味がない」と思っていませんか?
実は10〜20分程度の昼寝でも、脳のパフォーマンスは十分に改善することがわかっています。
2021年に発表された系統的レビューでは、平均55分の昼寝が認知機能全体を有意に改善することが示されましたが、特に注目すべきは30分未満の昼寝でも効果が確認された点です。
✔️ 30分未満の昼寝で認知機能が有意に向上(効果量:0.22, 95%信頼区間:0.03〜0.42)
─ Dutheil et al., 2021
■ 眠気・注意力の回復に最適
短い昼寝が特に効果的なのは「注意力」の回復です。
同じ研究でも、「注意力」に対する効果量は0.29と非常に高い数値を示しており、脳の「覚醒状態」を素早く回復させる力があると考えられています。
これは仕事や勉強などで「もうひと踏ん張りしたい」ときにぴったりのアプローチです。
■ なぜ短い昼寝が良いのか?〜“睡眠慣性”を避ける〜
長時間寝ると「起きたときにボーっとして動けない」こと、ありませんか?
これは「睡眠慣性(sleep inertia)」と呼ばれるもので、深い睡眠(特に徐波睡眠)から起きた直後に認知機能が一時的に低下する現象です。
短時間(20分以内)の昼寝はこの深い睡眠に入る前で止まるため、目覚めたときもスッキリとし、すぐに活動を再開できます。
✔️ 30分以内の昼寝は、睡眠慣性の影響を最小限に抑えながら、最大の認知回復を得られる
─ Lovato & Lack, 2010
■ NASAも推奨している“戦略的昼寝”
実はNASAも、パイロットや宇宙飛行士に「戦略的な昼寝(strategic nap)」を取り入れています。26分の昼寝でパフォーマンスが34%向上したという報告があります。
短い昼寝であれば、会社や学校のお昼休憩中にもとれそうですね。
引用 Dutheil F, Danini B, Bagheri R, et al. Effects of a Short Daytime Nap on the Cognitive Performance: A Systematic Review and Meta-Analysis. Int J Environ Res Public Health. 2021;18(19):10212.
Lovato N, Lack LC. The effects of napping on cognitive functioning. Progress in Brain Research, 2010; 185: 155–166.