目次
Outline
20分の仮眠で疲労回復は本当にできるのか?最新科学が示す答え
午後になると強い眠気に襲われることはありませんか?実は、20分程度の短い仮眠をとることで、眠気をリセットし作業効率を回復できることが科学的に示されています。今回は、東京大学の林らの研究グループが行った実験(Sleep, 2005)をご紹介します。
研究の概要
- 対象者:健康な大学生10名(19〜24歳)
- 条件:夜間睡眠を約1.5時間短くした翌日に実験
- 方法:
- 仮眠なし(休憩のみ)
- S1仮眠:ステージ1(浅い睡眠)に入った後に起こす
- S2仮眠:ステージ2(やや深い睡眠)に入った後に起こす
- 測定項目:
- 主観的眠気・疲労感
- 認知課題(視覚検出課題や数字記号置換課題)の正答率
- スロウ・アイ・ムーブメント(SEMs:眠気の指標)
主な結果
眠気と疲労感
- S2仮眠(平均約16分)後は、眠気が有意に低下し、気分も改善。
- S1仮眠後は眠気がやや軽減したものの、効果は限定的。
- 仮眠なしでは午後に眠気と疲労が顕著に増加。
認知課題の成績
- S2仮眠群で正答率の維持が確認され、集中力が回復。
- S1仮眠群ではむしろ成績が悪化傾向。
- 仮眠なし群も午後に成績低下が見られた。
自律神経と眠気の指標
- S2仮眠ではSEMsが減少し、眠気の客観的指標も改善。
- S1仮眠ではSEMsが増加し、眠気が残存。
なぜS2仮眠が有効なのか?
- 睡眠スピンドルの効果
- ステージ2睡眠では「睡眠スピンドル」と呼ばれる脳波が現れ、情報処理や疲労回復に関与すると考えられています。
- 深い睡眠に入らない絶妙な長さ
- 20分程度ならノンレム睡眠の浅い段階で起きられるため、起床時のだるさ(睡眠慣性)が起きにくい。
- 集中力と記憶の回復
- S2仮眠後は短期的な認知機能が改善し、午後の作業効率が上がることが確認されました。
日常生活への応用
- 15〜20分以内の仮眠を目標に
- 午後3時までにとることで夜の睡眠に影響しにくい
- 仮眠前にコーヒーを飲む「カフェインナップ」も効果的(目覚めやすい)
- 仮眠環境は 静か・暗い・涼しい が理想
まとめ
Hayashiらの研究は、20分程度の短い仮眠、特にステージ2睡眠を含む仮眠が最も疲労回復に有効であることを示しました。
午後のパフォーマンス低下を防ぐために、ぜひ日常に取り入れてみてください。
引用文献
Hayashi M, Motoyoshi N, Hori T.
Recuperative power of a short daytime nap with or without stage 2 sleep.
Sleep. 2005;28(7):829–836. doi:10.1093/sleep/28.7.829